埼玉県鴻巣市に家を買って住み始めて12年。なのに自分の住む鴻巣市に「地域寄席」あることを知ったのは昨年の事でした。「鴻巣落語会」。地元のレストランオーナーとそのお仲間の尽力で、20年以上続き公演回数も200回を誇る「大落語会」です。昨年(2009年)の夏に、初めて行ってみると、落語家とお客さんがあ・うんの呼吸で落語会を楽しんでいることを肌で感じられる地域落語会でした。
メンバーいつも同じ3人の落語家(時々ゲストも入る)。桂春雨さん、柳家花緑さん、そして立川文都さんでした。春雨さんは関東の出身ですが、関西で落語になった人、文都さんは、関西出身者で立川流に入門した人。花緑さんは言わずとしれた名人・柳家小さん(故人)さんのお孫さん。3人とも今や押しも押されぬ真打ちですが、「鴻巣落語会」を始めた時は二つ目でした。その日、私は花緑さんの高座には間に合いませんでが、春雨さん文都さんの高座は観ることができました。お二人を観るのは初めてでした。そして私にとって文都さんの高座を観る最初で最後の機会になりました。文都さんがその年の10月29日に49歳の若さで亡くなってしまったからです。文都さんは病院の患者であること示す腕輪を見せましたが、重い病気を患っていると感じさせない高座でした。ですから、しばらくして訃報を聞いた時は、ちょっと信じられませんでした。
先日、私にとって2回目となる鴻巣寄席にいってきました。出演者は、花緑さんと春雨さん。100名ほど入る会場にお客さんぎっしりです。最初は花緑さんのお弟子さんの前座(柳家まめ緑)で、「狸の恩返し」。正直、棒読みの落語でしたが、お客さんは心得たもの。きちんと笑い、笑いのとれたまめ禄さんは、間違うこともなく噺を終え、暖かい拍手を背にうけて高座をおりました。「誉めて育てる」。そんな言葉がピッタリの光景でした。
春雨さんも花緑さんもマクラでローカルな話をいれましたが、これがまたうける。お客さんのとってやや自虐的な笑いになるのですが、ながいつきあいが培った「落語家とお客の信頼関係」があるからこそできるマクラでした。それぞれ2席をやったのですが、その受け方のすごいこと。当然落語家の話も熱が入ります。爆笑につぐ爆笑そして万雷の拍手で落語会は終わりました。
9月18日(土)は「たけしん落語会」の2回目。お客さまは、前回の倍。40人弱でした。
お二人のファンの方を中心ですが、路頭の呼び込みでも聞いてくれた方がいました。
アンケート書いていただいた方の言葉を借りれば「ノホホン落語の喬之進さん、キレキレ落語のたけ平」がそれぞれ持ち味を出し、かつまたお客さまもよく笑ってくれて、たいへん楽しい落語会になりました。また今回から春風亭朝呂久さんに前座に入ってもらったことで、落語会として「整いました」感がありました。朝呂久さんの高座は明るくて声が大きくて、お客さんの「笑い」の神経に第一撃を与えてくれました。
今回のたけ平さんの「お見立て」はすばらしかった。
聞いていて、早く「墓参り」シーンにこないものかとワクワクして聞いていました。テンポも非常によく、実際は30分ほどの噺ですが、5分くらいで聞かされたように錯覚してしまうほどでした。次回への期待感が増す落語会でした。次回は2011年3月5日です。
9月23日(祝)
自由が丘で「古今亭駒次の鉄道落語&鉄トークライブ」。東急東横線と大井町線が見渡たせる事務所での落語会です。企画してから開催まで告知期間が短かったにもかかわらず、駒次さん人気と鉄道人気が相まって昼と夜、あわせて2回の高座を開くことになりました。
当日は、生憎の雨模様だったのですが、昼夜合わせて、34人のお客様が来場しました。
駒次さんが、「これが鉄道落語会だと、それだけを目指して来場した方、手を挙げてください」と問いますと殆どの方が挙手。駒次さんも「では安心して」という感じで、「戦国鉄道絵巻」(注1)の噺を始めました。落語が終わると、駒次さんが自分の撮影した写真を「プロジェクター」で写しながらの「鉄トーク」。これもまた、小ネタ満載のお話で、大爆笑。お客様の多くは鉄道ファンでしたから、分かってる話であるにも関わらず、駒次さんのお話に爆笑するのですねぇ。
注1)戦国鉄道絵巻のあらましはこちらでわかります。
http://jiyugaoka.keizai.biz/headline/622/
鴻巣落語会、たけしん落語会、鉄道落語を通じて思ったことは、良い落語会は落語家だけでできるものではなく、お客さんの落語家との協力があって実現するものだと思いました。
「芸人は上手も下手もなかりけり行く先々の水に合わでは」
三代三遊亭金馬のマクラで覚えた川柳です。どんなに落語が上手くても、聞いてるお客さんに好かれなくてはいい落語家になれないよ、落語家はお客さんに育てられるんだよ、ということでしょうか。これからも楽しい落語会にするためにどうしたら良いのか、模索しながら落語会の開催を続けて行きたいと思います。